エモーショナルを探せ

この世界にはエモーショナルが足りない

ノンタイアップの自由な曲で抉ってる岸田教団&THE明星ロケッツ

 

 

岸田教団&THE明星ロケッツ/nameless story (アーティスト盤/2枚組)

岸田教団&THE明星ロケッツ/nameless story (アーティスト盤/2枚組)

 

 

先日発売された岸田教団&THE明星ロケッツの最新シングル「nameless story」なんですが、相も変わらずこのバンドはタイアップ外の自由なカップリング曲が強すぎた。

 

これまでの岸田教団のカップリング曲を振り返るとボーカルのichigo作詞のものが多く、全部エモいんですよこれが。(しかし岸田はこれを女々しいと呼ぶ)

振り返ると「circus」「ハンゲツトウゲ」「count 4」「EGOISTIC HERO」などライブで歌えばかなりのレア曲。アルバムに収録された「EGOISTIC HERO」ですら、私はまだ一度しかライブで聞いたことがありません。そしてこの曲は演奏する方も、聞いている方も非常にハード。

「circus」に関しては個人的に岸田教団楽曲の中でも1,2を争うエモ曲なんですが、『君が僕から離れていくなら勝手にしたら?まあ君にとって僕以上の奴が見つかるとは思わないけど』っていう感じのエゴにエゴを重ねて束縛と支配を振りかざすようでありながら、離れていく君をただ見ていることしかできないエモーショナルがゴリゴリのロックサウンドで聴けるのが良い。落ちていく僕の自己犠牲を感じるのも良い。

 

そんなカップリング曲はichigoに任せろが続いていたんですが、ここ最近のシングルでは「ストレイ」のカップリング曲「sleep walk」、そして今回の新曲「nameless story/暁のカレイドブラッド」のカップリング曲「anesthesia」は総帥である岸田の作詞でした。

前者の「sleep walk」はタイアップ曲である「ストレイ」をOPテーマとしたアニメ・博多豚骨ラーメンズの登場人物を思わせるような楽曲で沁みるなあ、って思っていた。

『この地球上に簡単な愛はない 面倒なもんだよね』

の部分は本当に良い歌詞だなってずっと思ってる。

 

岸田教団ってどちらかというと言論バトルで勝てないわけがない岸田が作詞した「世界もお前が生きてきた人生もクソかもしれんが、自分を信じるのも自分を裏切るのもお前なんだから周りは気にすんな。人と人とはわかり合えん。殴れ、無理なら諦めて死ね」みたいなたまに攻撃的で信仰心ガチガチに上げてくるタイプと、前述した通り岸田教団のボーカルにして女帝ichigoが作詞する「君のことが好きなのに君は僕から離れていくし、でも僕は君を止めることもできないから、ありふれた愛なんてものではなくて、僕と君の間にしか結べない別の感情を愛の代わりにしよう。破壊衝動とか」みたいな推しカプイメソン芸人まっしぐらのタイプがあるわけで。

 

私が岸田教団をやめられない理由が一組のバンドにおいてこの二極化される歌詞にあって、仕事とか対人関係に悩むと岸田作詞の曲聞いて「殺傷力さえあれば大体うまくいくな、よし」って力が入るし、推しカプを感じたくなったら「恋したぐらいで失うのなら巻き戻して始めない」という歌詞で二次創作が書ける。一枚のアルバムで2度お得。「hack/SLASH」は名盤です。

 

 

そんな岸田教団お得意のカップリングエモーショナル、今回も凄かった。

 それが「anesthesia」なんですが、この歌詞刺さらない人間いますか???

 

 貴方が望む僕を僕は特に望んでいない

勝手に期待され失望と共に終わる

ずっとそうさ

 

世の中ほとんどの人間が親とか先生とか先輩とか上司とかに理想語られたり希望を押し付けられたりしたこと一回はあると思うんですけど、それって結局自分が望んだことじゃないのに期待されてできなかったら失望される、そんでまた押しつけにあうっていう負のスパイラル。これが永久機関だろ。

誰もが感じたことがある負の経験を出だしにぶつけ、「ずっとそうさ」とあるように時代が変わろうが男だろうが女だろうが誰しも経験することを表してる。

 

後この曲サビに関しても、

冷たい刃でその枷を壊せ

この生は他でもない僕のためにある

誰かの後悔を僕が背負う必要はない

だからもう迷わない自分だけを信じて

 っていうかなり直接的な表現で、考察のしようもなければ解釈で揉めることもない。

岸田作詞曲の良さってここにあって、字面のまま歌詞を受け取ることができるんですよね。私も比喩に比喩を重ねた曲とか好きなんですけど、それってどう足掻いても考察や歌詞の受け取り方バトルが起こることも多いんですが、岸田作詞はほとんどそれがない。

過去にも『諦めるくらいなら死んだほうがマシさ』や『大体の場合偉い奴は信用ならないけど 必要があるなら仕方ないって思えなくもない』などこんなのどこを履き違えたら解釈ずれるんだよ、みたいなストレートな歌詞。

それでいて岸田の歌詞は読んでて綺麗なんですよね。露骨な表現の歌詞が悪いわけではなく、聞いていて不快感を感じない攻撃性。かといって綺麗ごとだけでは終わらない。だから生きていくうえで岸田詞は必要。

 

あとこの曲Aメロがichigoにしては低い音から始まって徐々に上がっていき、一度ichigoのため息の様な呼吸音を挟んでサビに進んでいく。そして2番は同じAメロでもオクターブ上げて歌っていたりと、同じ音運びなのに【僕】の感情が全く違う。これはichigoの歌唱力と表現力のなせる技です……。

 

岸田教団、いつだって背中を押してくれる曲を作ってはライブで最高の時間をくれるのにこんな全人類に響く歌作ってどうするんだ……。

 

岸田:これは『ジョーカー』を観てから書いたから、ロクでもないヤツの歌詞なんですよ。俺は、この曲の主人公を肯定しているわけじゃない。

 

歌詞の解釈は背差万別ですね。『ジョーカー』見てないので見ます。

 

 

 

岸田:女性が出世しようとすると、ある一点から偉くなれないことを“ガラスの天井”といって、フェミニズムの人達がすごく文句を言っているんだよね。それに反論する形で、男性差別に対して戦っている人達が「女性が天井にぶつかるなら、男性は地下室にいる」と言っているんだ。透明の地下室にいると。透明の地下室というのは、軍人だったり、命の危険がある仕事には基本的に女性は就かない、そういう仕事は男性がするしかないというところで押し込められていると。そういう意味では男性も女性も、どっちもどっちなんだよという思考があるんだ。 

 

岸田:ちゃんと言葉として、あるんだよ。それで、男性差別論者の人が使うんだけど、男性差別を意識し過ぎて、特に差別されていないのに自分は差別されていると思い込んでいるヤツらも同じ言葉を使うんだよね。だから、本当に差別されている男性もいるけど、透明の地下室という言葉を発する全ての人が差別されているかどうかはわからない。自分は男性として生まれて、男性として期待されるのはもう無理だけど、そこから降りることができないと文句を言っているヤツがいても、果たしてその主張が正しいかどうかは、まだ俺の中で答えが出ていないんだ。

 

アメリカのロックバンドが必ず1回はやることで、ママ・ソング”というのがあって、自分の母親に対して歌う曲なんですけど、否定的な意味で歌うことが多いんですよね。要は、アメリカの伝統的な人生を歩んでほしいと願う親に対して、“俺はそんな人生を望んでいない。あなたの期待には応えられない”ということを彼らなりに歌うという。その曲がファンから一番共感されていたり、本人達にとっても大事な曲だったりするんですよ。「anesthesia」は、それを軽い気持ちでやってみた(笑)。

 

岸田の頭の良さもこういう考えもやっぱり好きなんだよな~~~。